晩秋、木々が黄葉した葉を落とし始めると影の美しさに足を止めることが多くなった。
木枝を梳く陽射しや空の変化も季節の移り変わりを感じさせる。
いつも通る散歩道。
2kmくらいの距離だけれど、結構相模の自然林が残っていて鳥の声や風の音も聞こえる。
もの憂い時も高揚した時も、自然がボクを包み込んでくれて、心のアップダウンをうまく調和してくれる。
そんな道に出会えたのは幸せだなと思う。
道といえば、映画だとフェリーニの『道』がすぐに思い浮かぶ。
それから歌だとビートルズの『The Long and winding road』、
詩だとウンベルト・サバの『三本の道』、
みんな有名な作品だから知っている人は多いだろうが、ボクの人生にずっと伴走して励ましてくれたような大切な作品だ。
サバの出だしのフレーズはいつも心にしみる。
「トリエステには、
閉ざされた悲しみの長い日々に
自分を映してみる道がある」
須賀敦子の訳で、緩やかな坂道を流れるいくつもの時代の悲しみや喜びが静かに語られている。
ビートルズの透き通ったメロディーで浮かび上がる「長く曲がりくねった道、君のドアへと続く道」やフェリーニの「道」の最後の場面、深夜の波打ち際で嗚咽する旅芸人ザンパノのシーンにも泣かされる。
人にはそれぞれの道があるんだなと思う。道にはいろいろな分岐点があって、そこをどうにか選んだり、選ぶこともできず状況に流されながらボクらは生きていてる。
でも結局最後には一つの道しか残らなくて、きっとボクらはいろいろな思いで歩んできた道を振り返るのだろう。
きっと、ボクはそんなところにいるのだろう。
晩秋の葉を落として足元に伸びる林の影は、いまのボクにはそんな人生の思い出のような美しさや悲しさと重なる。
きょうのイチョウの落葉は見事だった。黒い地面を覆うレモンイエローが陽射しの下で輝いている。
「こんなイエロー、ボクには出せないけれど仲間の誰かだったら出せるかもしれいないなあ」とつい思ってしまう(笑)。
そんなイエローの上にも木立の影が伸び、ボクは思うのだ。
いろいろなことがあったけれど、ボクに残っている道はフェースofワンダーに続く道だったんだなあと。