りんごがひとつころがってテーブルからおちる
床におちるまで
100年はしずかにすぎてゆくだろう・・・注1)
昔、そんなこと書いた詩人がいた。
ボクがキミの黄色をほんとうに美しいと思うのに、やはり100年はかかるかもしれない。
ボクはため息をついて海を見ている。
100年後にも波はきっとここに打ち寄せているだろうけれど、
同じ波とは言えない。
いま、キミの黄色をキレイだと言えなければ、100年後にも言えるわけはない。
とて大きくて美しいレモンをいただいた。
それを机の上に置いてキミは紡錘形のレモンを1秒で描いた。
それから、4回くらい、あらあらしく筆を走らせ、色を塗った。
紡錘形の形は崩れた。
美しいレモンはそこにはない。
キミの黄色だけが
そこにある。
注1・・・堀川正美『さいごに駆けこんでくるひと』